漢字家族

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[愛]
胸いっぱいの切なさ

 という字は、昔は「旡+心+久」と書いた。今日のという字の下半部は原型のままだが、その上部は旡(カイ・アイ)のひどく変形したものである。この旡という部分は、アイという発音を示す大切な個所でもある。そこで、旡−既−慨−漑−概など、およそを含むコトバを並べて考えてみる必要があろう。

 とは、人間が腹をいっぱいにつまらせて、ウーンと後ろにのけぞった姿である。の字は、お盆に盛ったごちそうを前にして、たら腹食べ終わった人間が、ウーンとのけぞっているさまを表す会意文字である。の字の左側は、盆上に盛った丸いオマンジュウである。

 今日でも「いっぱい」になった状態を(キ)という。たとえば日食や月食のとき、黒い(ショク)の部分が、太陽や月の表面をいっぱいに食い尽くしたのを「皆既食」という。「し尽くした」のは「すでに終えて余白がない」ことだから、には「すでに」という副詞の意味も生じてくる。
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