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一炊之夢
いっすいのゆめ


 「一炊之夢」(いっすい・の・ゆめ)

 これには、いろいろのいい方がある。黄梁夢(こうりょうのゆめ)。黄梁一炊夢。邯鄲夢(かんたんのゆめ)。一場春夢。盧生之夢(ろせいのゆめ)。

  一度、飯をたく間の夢という意味で、人生のたのみがたく、栄枯盛衰の浮世の、はかないことを形容して「要するに一炊之夢にすぎない」という。

 出典は『枕中記』という物語。

  唐の開元七年(西暦719年)、盧生(ろせい)という若者が立身出世を志し、馬で邯鄲(かんたん)へやってきて、とある宿屋にはいった。

  そこには呂翁(りょおう)という仙人の術を心得た老人が泊まっていたので、身の上を物語る。

 宿屋の主人が、これから飯をたこうとする、飯の来るのを待って盧生は眠ろうとする。

  呂翁が袋の中から青磁の枕を取り出して彼に貸してくれる。その枕の両端には穴があいている。盧生がその穴を見ているうちに、穴はだんだん大きくなり、トンネルのようになる、その中を進んでいくと立派な家がある・・・。

 それから、とても美人で、しかもしとやかな娘と結婚する。科挙の試験(進士)に合格し、それから知事になったり、検事総長になったりする。一度は讒言(ざんげん)に会って、死刑にされようとするが危うく免れる。後に位は人身の栄をきわめ燕国公に封ぜられる。その間に子供は五人、孫は十何人もできる。八十すぎて病気で死ぬ。

  盧生は、あくびして目が覚(さ)めれば、なんのことはない、もとの宿屋に寝たままであり、呂翁が、その傍に坐(すわ)っている、主人は飯をまだ運んでこない。「なあんだ夢だったのか」と盧生がいうと、呂翁は「それが人生だよ」と教える。

  しばらく考えていた盧生は、「なるほど立身出世といっても、はかないものだという道理が判(わか)りました、先生のお教えは有難(ありがと)うございました」と悟(さと)って帰っていった。
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