漢字家族


一挙両得
いっきょりょうとく


 一つのことをして、一度に二つの利益をあげることを「一挙両得」という。

 昔、弁荘子(ベンソウシ)という強い男が宿屋に泊まっていた。虎が現れたというのを聞いて、退治に出かけようとした。

 その時、ホテルのボーイが彼を引き止めて「そんなに急ぐことはありませんよ。まあまあ、お待ちなさい。二頭の虎が牛を食べようとしています。

 いまに、この二頭は牛の肉の奪い合いで喧嘩(けんか)を始めますよ。二頭の虎が大喧嘩をやれば、小さいほうの虎は負けて殺され、大きいほうの虎は勝っても、そうとう傷ついて弱るでしょう。

 その傷ついて弱っている大虎を刺し殺せば、一ぺんに二頭の虎を退治することになるでしょう、一挙両得ですよ」といった。

 弁荘子は、ボーイのいうところをなるほどと思って、そのとおりにした。

 彼はやすやすと傷ついて弱った虎を刺し殺し、一ぺんに二頭の虎を退治したという評判が高くなった。

 この話は「戦国策」に登場する。

 中国の戦国時代に韓と魏の二国が一年以上も戦いを続けていた。秦の恵王は、どちらかを救おうとして、家来どもに相談したが、なかなか意見が一致しなかった。

 その時、陳軫(チンシン)という賢い家来が、この「一挙両得」の物語をしたので、恵王は、どっちかの一方を救うのをやめて、しばらく傍観、一方が負け、勝った方も弱ったところで、一ぺんに両方の国を亡ぼしてしまった。(戦国策・楚策)
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